事業主=東急不動産株式会社
建築設計=株式会社東急設計コンサルタント
ランドスケープ=株式会社テン・ランドスケープアソシエイツ
ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resorts
Kyoto city, Kyoto
Business owner is TOKYU LAND CORPORATION.
Architectual design by Tokyu Architects & Engineers INC.
Landscape design by Ten Landscape Associates
Text by Hiromitsu Sato [Ten Landscape Associates]
Photo by Jimmy Cohrssen, Grafilm [Seiya Aoki]*
日本の古都京都の歴史・文化・自然に恵まれた景勝地に計画されたワールドクラスのスケール感と日本の美意識を備えたリゾート空間
ロケーション
本計画地は、京都市中を背にして、西側は、花札に描かれた特徴的なお椀型のシルエットの鷹ヶ峰(たかがみね)。そこから連なる、鷲ヶ峰(わしがみね)、天ヶ峰(てんがみね)の三座を総称した「鷹峯三山」。東側には、豊臣秀吉の命により築かれた全長22.5kmにも及ぶ土塁「御土居」に挟まれた谷あいの地形に位置する。さらに、北側には光悦寺垣で知られる「光悦寺」を含む山々の景が続く。様々な物語を持つ山々の緑に囲まれた谷あいの地形は、市中の喧騒を感じさせない独特の空気感を醸し出している。
その谷あいを流れる「天神川」(平安時代の紙座があったことから紙屋川という別名を持つ)、春は桜、夏は川床、秋は紅葉等、四季折々の表情を持ち季節ごとに多くの人々が訪れる「しょうざん」。その領域内のROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsは、他に例を見ない地形、歴史、文化に包まれた特別な領域の中で、建築、インテリア、ランドスケープ、ライティングを一体的に捉え、独自性のある新しいリゾート空間として計画された。
計画デザイン体制
日本が誇る国際的な観光都市である京都にインターナショナルブランドのリゾートホテルの計画をするにあたり、建築設計は数多くのリゾートホテル設計実績をもつ東急設計コンサルタント、インテリアはアジアを拠点に世界のホテルプロジェクトを手掛けるBLINK Design Group、ライティングデザインはインターナショナルに展開し様々なプロジェクトを手掛けるワークテクトが参画し、古都京都を舞台に、既存の京都の概念にとらわれない、国際的で多様性のある価値観で計画が進められた。
計画概要
「Kyoto Simplicity」という設計思想のもと、リゾートホテルのランドスケープとして、この地の持つ静謐(せいひつ)な空気感を継承し、華美な装飾や独自な主張を抑えたつくりとし、ホテルの敷地と周辺の風景を一体的につなぎつつ、さらにホテル棟に内包された中庭空間にも、周辺風景を取り込む仕掛けのランドスケープとした
また、インターナショナルブランドのリゾートホテルとして、京都の意匠をそのまま、引用するのではなく、全域の空間構成を「軸」や「シークエンス」等、ランドスケープ的なスケール感で、周辺環境を大胆に取り込み、領域を大きく捉えたリゾート空間として計画。ゲストをもてなす身近な風景は、細やかで洗練された京都の職人技による本物の造りで仕上げるという、2つの尺度で空間を造り込んだ。シンプルな構成の中で、様々な地域要素を取り入れた計画により、ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsならではの独自性を持つ京都リゾートとして、この土地ならではの世界観を持つランドスケープの計画をおこなった。
計画内容
鷹峯三山、光悦寺周りの山々、御土居が織りなす稜線の内側の世界「郷(ごう)」と位置づけ、全域をROKU KYOTOのリゾート領域として、それらの風景を大胆に取り込むため、市中側を閉じ、敷地を取り囲む山々の方角は全面的に開放した計画とすることで、敷地内にとどまらず、広大なスケールのビューを持つリゾート領域を創出した。
リゾート風景を魅力的に演出するランドスケープは「視線軸とシークエンス」、「写り込み」等の計画手法を用い、大胆な構成のゾーニングとした。共用部と客室棟の間の中庭の南側(市中側)の端部からは、北側の「しょうざん」「光悦寺」方向へ1本の視線軸が通る構成となっており、周辺の山々まで取り込んだ広大な空間をリゾート領域として感じることができる計画となっている。また、ヒューマンスケールの領域をより魅力的にするために、建築空間を超えるごとに大胆に風景が変わるシークエンスとした。アライバルエリア、中庭(鷹峯の森)、水盤(鷹峯写し)、サーマルガーデン、紙屋川テラスの5つのエリアで構成し、ホテルゲストに印象的な風景体験を提供することのできるランドスケープ演出とした。
さらに、中庭空間の半分を占める大型水盤は、水盤に浮かぶ灯篭や、台杉の島を映し込むだけではなく、鷹ヶ峰のシルエットを映し込む水鏡として、昼は広大なスケール感、夜は幻想的な光の世界を施設内に提供する魅力的なリゾート演出とした。
ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsのシークエンスを構成する5つのエリア[その1]アライバルエリア
台杉(北山杉)で迎えるエントランス空間。ホテルの顔となるアライバルエリアの車寄せ空間は、印象的なシルエットで存在感のある3本の台杉に迎えられる。台杉は室町時代中期から建築の小屋組材として生産された北山杉で、今なお、周辺地域で生産されており、リゾート内の台杉は、すべて隣接するしょうざんで育てられた物を配置。アライバル棟の格子越しに見える水盤越しの中庭空間の緑が奥行のあるエントランス風景を作り出す。夜は、格子越しに見える照らされた樹木が灯りとなり、昼は、水盤越しに映し出された緑の景が遠方からのゲストを迎え入れる演出の空間構成となっている。
ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsのシークエンスを構成する5つのエリア[その2]鷹峯の森
ホテル共用部と客室棟の間の中庭空間の半分は、鷹ヶ峰からつながる麓の森として鷹峯三山や地域に自生する樹種を中心に構成。この地の持つ特別な領域感に溶け込み、風景を共有することで、ランドスケープスケールの広大なリゾート風景を作り出した。南北に延びる中庭空間に、視線を貫く軸を設け、中庭空間を超えて、その先の「しょうざん」の緑、さらにその先に広がる「光悦寺」やその背景の緑の風景を結ぶことで、京都ならではの奥深いリゾート風景を生み出した。リゾートスケールの風景の骨格作りと同時に、回廊から見える近景の庭は京都の職人の洗練された技が施された本物の庭として細やかな造り込みが行われている。
人の縁で結ばれる京都の庭
ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsは、ラグジュアリーリゾートとしてだけではなく、京都の魅力を伝える庭、ゲストをもてなす本物の空間として竣工を迎えることが出来たのは、京都の庭に携わり歴史を継承される偉大な方々のご支援とご尽力によるところが大きい。鷹峯の森の計画を進めるにあたり、京都の庭師北山安夫氏より、高台寺で話をお聞きした際の「勝ちすぎない庭」という言葉にはとても大きな影響を受けた。石勝エクステリアと植芳造園井上勝裕氏による質の高い仕事は、ランドスケープの思想を本物の庭の景へと高めた。最後に、コロナ禍で、日々庭に向き合った若き現場代理人に敬意を表したい。
ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsのシークエンスを構成する5つのエリア[その3]鷹峯写し(大型水盤)
中庭空間のもう半分は、大規模な水盤とし、鷹ヶ峰をはじめとする周辺の奥行のある緑の風景を映し込み、中庭空間に壮大なパノラマ風景を取り込む演出とした。水盤の穏やかな水面には、灯篭や台杉を配した浮島を設け、風景のアクセントとした。アライバル棟から客室へ向かう動線は、外回廊となっており、様々な角度から水盤と写りこむ周辺の風景のシークエンスを体験することができる。水盤を横断する2つの道行きは、レストランと客室をつなぐ屋根付き回廊と、しょうざん全体を回遊するパスとなっており、水盤の写りこみが印象的なリゾート風景を生み出す。
ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsのシークエンスを構成する5つのエリア[その4]サーマルプールガーデン
日本では、まだまだ事例の少ない、サーマルプール四季折々の風景を楽しみながら1年を通じて利用できる天然温泉を使用した屋外温水プール。穏やかなリゾートの一時を過ごす場所のランドスケープとして「しょうざん」の庭との境界をなくし、風景を共有するデザインとした。既存にあった工作物を撤去し、緩やかな芝生でつなぎ、数本の樹木を添えることで、新たな要素を作るのではなく、間引くデザインにより境界を無くし、ポテンシャルの高い既存環境を活かしたリゾート風景づくりを行った。
ROKU KYOTO, LXR Hotels & Resortsのシークエンスを構成する5つのエリア[その5]紙屋川テラス
レストランに面した川沿いのテラスは、紙屋川の川音とモミジの景を内外から楽しむテラスとした。紙屋川に面するレストラン前のテラスは、護岸をそのままにキャンティテラスを設け既存の風景を切り取ることで、清涼感のある風景をレストランにも提供している。
この地の魅力をリゾート空間として取り込む領域スケールのランドスケープ基本格子
観光の要素を強く持つ京都は、地域内に数多くのホテルを有する。その中にあって、リゾートという付加価値を加えたホテル計画を行うにあたり、ランドスケープという分野は、大きな役割を果たすことができると考えた。地形や地域の特徴を俯瞰して解析し、敷地内に留まらず、周辺環境を計画に取り込む事で、リゾート空間として更なる魅力を引き出すことが出来る。計画地は、南側に京都市中エリアで東は鷹峯三山、西はお土居、北は光悦寺を含む山々の緑に囲まれた谷あいの地形となっている。建築計画と一体的に、南側を背にする構成とすることで、ホテルエリアから望む風景は、「鷹峯三山」と「お土居」の緑の稜線内の風景で、周辺の市街地の喧騒をまったく感じさせない風景を確保する事が出来る。この領域内を「郷(ごう)」と位置づけ、1つの風景単位として、ランドスケープの計画を行った。
「郷」の内側の風景は、奥行のある緑の風景で、独自の空気感を持つ。あえて視界的な結界は設けず、麓の緑を場内の緑とつなぐ方向で、各部を計画することで、広大な風景を手に入れる事が出来るとともに、リゾートとしての魅力的な風景を創出することが出来た。さらに、京都のホテルでは最大級の大型水盤を中心部に設け、水盤自体に仕掛けを施すのではなく、周辺の景色を写し込む水鏡として、スケール感だけではなく、強い印象で風景表現をすることが出来た。中心部の水盤は、街灯りが入ってこない、「郷」の領域の夜に、照明により演出された幻想的な写りこみの世界を創出し、昼とは異なるリゾート風景を創出する。ROKUKYOTO, LXR Hotels & Resortsのランドスケープの風景は、ホテルのロゴとなっているアライバルエリアのシンボルの台杉(北山杉)以外は、あえて視線の中心となる場は設けず、周辺の風景やある角度から見える構図の相対関係で景をつくり、上質なリゾート空間としている。
The Resort in Kyoto
京都の紙屋川を中心として作り上げられた自然美の中、本阿弥光悦の地で培われた文化を感じ、鷹峯三山の大自然美と一体化して人々の琴線に触れ感性を研ぎ澄ます、そんなリゾートの本質といえる施設が京都中心部に隣接する、しょうざんリゾートの地に完成した。
ここは観光地化されていないリゾート空間であり、様式などの定型に嵌ることのなく、日本建築の精神を下敷きにしながら歴史あるストーリー性を有しつつ、フォトジェニックな空間の中で時を過ごす施設となっている。立地、施設作り、双方において本物のリゾートとして必要十分な条件を備えている日本でも、かつ京都でも稀有な施設である。
この恵まれたリゾートにおける真価を高めるべく、圧倒的風景と対峙しながら施設全景のシークエンスや奥行感を感じながら全景が見通せず各々の視点場から風景が見え隠れするよう工夫された全体配置計画に始まり、眺望や環境と繋がる額縁開口部の設定、ヒューマンスケールにブレイクダウンしたアプローチでのセンスオブアライバル、光と影、近景と遠景を組合せ、シンボライズした樹木の使い結界の曖昧さ、など圧倒的な自然の中では建築は脇役となり、長年培ってきたリゾート設計の定石となる作法がランドスケープを中心に発揮され揺るぎ無い本物のThe Resortとして京都でも唯一無二の存在として誕生した。…